大阪地方裁判所 昭和57年(行ウ)104号 判決 1987年3月16日
原告
甲野一郎
右訴訟代理人弁護士
永岡昇司
同
出田健一
同
戸谷茂樹
同
東垣内清
被告
守口市
右代表者市長
木﨑正隆
右訴訟代理人弁護士
森正博
同
板東宏和
同
前川宗夫
同
三木孝彦
被告
門真市
右代表者市長
中田三次郎
被告
守口市門真市消防組合消防長寺前一喜
右両名訴訟代理人弁護士
安田孝
同
大槻龍馬
同
谷村和治
主文
一 被告守口市及び同門真市は、原告に対し、各自金五万円及びこれに対する昭和五六年一一月二〇日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告の右被告両名に対するその余の請求、被告守口市門真市消防組合消防長に対する請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、被告守口市及び同門真市に生じた各費用の一〇分の一をそれぞれ同被告の負担とし、その余の費用は全部原告の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告守口市門真市消防組合消防長が昭和五六年一一月二〇日付でした原告を分限免職するとの処分は取消す。
2 被告守口市及び同門真市は、原告に対し、各自五〇〇万円及びこれに対する昭和五六年一一月二〇日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は被告らの負担とする。
4 2項につき仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二当事者の主張
一 請求原因
1(任命及び本件処分)
原告は、任命権者である被告守口市門真市消防組合消防長(以下「被告消防長」という)から、昭和四九年四月一日、守口市門真市消防組合(以下「組合」という)の消防吏員に任命されたが、昭和五六年一一月二〇日付で地方公務員法二八条一項二号により分限免職処分を受けた(以下「本件処分」という)。
2(不服申立て)
原告は、本件処分を不服として、昭和五六年一二月一八日、組合の公平委員会に対して審査請求をしたが、三か月を経過しても裁決がなかった。
3(国家賠償法一条一項該当行為)
(一) 組合の当時の消防長喜多洋三(以下「喜多消防長」という)は、組合に労働組合がないことを奇貨として、就任以来、職員のうち五四歳以上の高齢者や病弱者或いは原告のような遠距離通勤者に対し、徹底したいやがらせを施し退職に追いこむという方針を持っていたものであるが、門真消防署(以下「門真署」という)の本田正人署長(以下「本田署長」という)及び庶務担当司令平田市蔵(以下「平田司令」という)らは、喜多消防長の意向をうけて、原告に対して以下のようないやがらせをなした。
(1) 原告は、かねてから表記住居地から通勤していたものであるが、遠距離を理由に一日も遅刻したことはなく有給休暇もほとんど取ったことがない真面目な勤務ぶりであったのにもかかわらず、緊急出動に支障があること、多額の通勤交通費がかかることを理由として門真署管内への転居を執拗に勧められた。
(2) 原告は、昭和五五年一〇月一日付で、警備係から庶務係に配転されたが、右配転は、原告の適性を評価してなされたものではなく、隔日勤務の警備係から庶務係にすれば日勤となり、遠距離通勤者である原告は音を上げて遅刻や欠勤が増えるであろう、そうなれば管内に転居するか、さもなくば退職するに至るであろうとの狙いのもとに本田署長らが協議のうえでなしたものであり、庶務係はもともと定員が三名であったのに、わざわざ定員を一名増やして原告を配置したところからも、合理的理由を欠く配転であったことは明らかである。
(3) 原告は、この配転に応じた後、何度も隔日勤務に戻して欲しいと頼んだが、本田署長らはこれに応じないで逆に「昭和五六年四月になっても管内に転居しない場合には退職する旨誓約せよ。」と迫り、原告はやむなく右趣旨の誓約書を差入れさせられた。
(4) また、原告が不慣れな庶務係の仕事で些細な失敗をすると、その都度平田司令は他の職員に聞えよがしにそのミスをけなし叱責を加えた。
(5) 原告は、昭和五六年三月末、同年四月から実施の職員配置表案を門真署から消防本部へ送付する日に署長室に呼ばれ、本田署長から(3)記載の誓約を果たさなかったとして一時間以上にわたって徹底的に責め立てられ、これに堪え切れなくなった原告は、その場で同年四月一日付をもって退職する旨の退職願を書かされた。
(6) 本田署長らは、原告が右退職願を提出するに先立って、職員配置表案から意図的に原告の氏名を削除して作成し、原告が右案を見て狼狽しても声もかけず、そのうえ庶務係職員石丸一彦と同道させて消防本部まで右案を原告に持参させた。
(7) 喜多消防長が右退職願をなかったものとして取り扱う旨指示し、原告の氏名が職員配置表に記載された後も、本田署長らは、庶務係の職員に命じて原告に一切仕事を与えず、原告と口をきくことを禁じるなどし続けた。
(二) その結果、原告は日に日にやつれていき、昭和五六年四月一三日から病気欠勤をせざるを得なくなり、同年五月二一月には神出病院の精神科に入院し、同年九月七日には同病院を退院したが、その後本件処分当時は自宅から同病院に通院加療中であったのにもかかわらず、被告消防長は本件処分をなした。
4(因果関係及び損害)
原告は、違法な本件処分及びそれに至る一連のいやがらせ行為によって一挙に生活の基盤を奪われ、これらの行為が一因ともなって精神疾患に罹患し、更には受忍限度を越えて名誉感情を傷つけられるなどの精神的損害を蒙った。
右損害に対する慰謝料は、少なくとも五〇〇万円が相当である。
5(責任)
被告守口市及び同門真市は、両市の消防事務を処理するために組合を設置しているところ、組合規約八条によれば、組合の経費は両市の分賦金その他の収入をもってこれにあてることとされており、右分賦金は、毎会計年度の前年の一二月末日現在における住民基本台帳法及び外国人登録法にもとづく両市の人口、世帯のそれぞれの合計数を、次の割合で両市に分賦するとされている。
人口割 一〇〇分の五〇
世帯割 一〇〇分の五〇
従って、被告守口市及び同門真市は、国家賠償法三条一項の費用負担者として前項の損害賠償責任を負う。
6 よって、原告は、被告消防長に対し、違法な本件処分の取消し、及び、被告守口市及び同門真市に対し、国家賠償法一条一項、三条一項にもとづく損害賠償として連帯して五〇〇万円及びこれに対する最後の不法行為の当日である昭和五六年一一月二〇日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いをそれぞれ求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1及び2の事実は、いずれも認める。
2(一) 同3(一)冒頭の事実は否認する。
(二) 同3(一)(1)の事実のうち、原告が表記住居地から通勤しながら遅刻、欠勤をしなかったこと、平田司令らが、消防吏員の職種の性格を理由に、門真署の近隣への転居を原告に勧めたことは認めるが、その余は否認する。
原告の遠距離通勤については、原告は、任用の時点から近隣へ住所を移す旨約していたもので、右勧告は、消防吏員の職種などを勘案すると、妥当なものである。
(三) 同3(一)(2)の事実のうち、原告が原告主張日付で庶務係に配転されたことは認めるが、その余は否認する。
配転の動機は、原告が警備係、予防係、調査係など他の部署で働けるだけの適性に欠けているため、庶務係において地理、水利、対象物などを勉強する機会を与え、将来は副消防士長昇格の推せんもできるような消防吏員になってもらうというところにあったものである。
(四) 同3(一)(3)の事実のうち、原告が「宣誓書」と題する文書を平田司令に提出したことは認めるが、その余は否認する。
右文書は、日頃から無責任かつ安直な行動をくり返していた原告が、履行する意思など全くないにもかかわらず、自発的に書いてきたものである。
(五) 同3(一)(4)の事実は、否認する。
むしろ、平田司令は、原告が庶務係に配転されて以来、直属の上司として親身になって指導を続けてきたものである。
(六) 同3(一)(5)の事実のうち、原告が退職願(ただしその内容は否認する)を提出したことは認めるが、提出の時期、経緯等その余は否認する。
(七) 同3(一)(6)の事実のうち、本田署長らが、昭和五六年四月から実施予定の職員配置表案から原告の氏名を削除して案を作成したことは認めるが、原告が右案を見て狼狽したが声もかけなかったこと、庶務係職員石丸一彦と同道させて消防本部まで右案を原告に持参させたことを除くその余は否認する。右案の作成は、原告が履行の意思も全くないのに前記「宣誓書」などを無責任に書いて提出してきたので、本人にけじめをつけさせ発奮を促す趣旨でしたことであって、本田署長らに、原告をはずかしめるとか辞めさせるとかの悪意は全くなかったものである。
(八) 同3(一)(7)の事実のうち喜多消防長の指示で原告の氏名が職員配置表に記載されたことを除くその余は、否認する。
(九) 同3(二)の事実のうち、原告が原告主張の経緯で欠勤、入退院したことは認めるが、原告が日に日にやつれていったことは否認する。
3 同4の事実は、否認する。
4 同5の事実のうち、被告守口市及び同門真市に責任が帰属することは争う。
組合は、地方自治法上の特別地方公共団体であり、独立した法人格を有しているものであるところ、所属職員に対して分限などの人事管理権限を持っているのは被告消防長であって、守口市長、門真市長には右権限が与えられていない。また、国家賠償法三条一項にいう「費用の負担」と本件組合規約八条の「経費の負担」とは、前者が当該公務員に関して支出されるものであるのに対し、後者は当該公務員が選任監督を受ける地方公共団体たる組合に支出される点で異なるものである。
従って、右両被告は責任を負わない。
三 抗弁
1(本件処分の理由)
被告消防長が原告に対し交付した処分説明書記載のとおり、本件処分の理由は、「当該職員は、昭和五六年四月一三日から私病のため病気療養中であるが、医師一名によれば、精神分裂病のため、たとえ寛解しても消防業務には堪えられないとの診断であり、そしてもう一名の医師によれば、性格的に未熟であり、外界の刺激に対して有意義で適切な反応を示すことが困難であるとの診断であるため、消防職務の遂行には支障があり、またこれに堪えないものであると判断し、地方公務員法の規定により処分するもの。」というものである。
2(本件処分の手続)
被告消防長は、守口市門真市消防組合消防職員の分限に関する手続及び効果に関する条例二条二項にもとづき、本件処分をするに際し、指定医として神出病院医師是成太一(以下「是成医師」という)及び大阪警察病院医師井上修(以下「井上医師」という)の二名を指定し、右医師二名に原告を診断させたうえその診断書を徴した。
四 抗弁に対する認否
1 抗弁1の事実のうち、被告消防長から交付された処分説明書に被告主張の記載があったことは認めるが、原告に分限休職処分によってまかなえないほどの高度の精神疾患があったことは、否認する。
2 同2の事実のうち、是成医師、井上医師が原告を診察したことを除くその余は不知。
是成医師の診断書は、傷病名が「精神分裂病」となっているのに対し、井上医師の診断書は、「性格障害・社会的未熟」となっており、指定医二名の診断内容がくい違っていること自体でも、本件処分の理由としては不十分といわざるを得ないが、是成医師の前記診断書は、同人作成の三通の診断書の内容が相互に著しく相違していること、井上医師の前記診断書の内容及び加茂病院医師豊田雄敬(以下「豊田医師」という)作成の「心因性反応・抑うつ状態」との診断書の内容とも矛盾していること、また、そもそも精神分裂病の診断は極めて難しく、その予後の診断は更に難しいとされているにもかかわらず、即決即断を下し、消防の職務内容を知悉しているわけでもないのに、「寛解しても消防の職務の任に耐えることは不可能と思われる。」とまで断定して前記診断書に記載していることなどを総合考慮すれば、その信用性は低く、結局、被告消防長の本件処分は、前提となる事実についての誤認があり、ひいては十分な手続もふまずになされたものといわざるを得ない。
五 再抗弁
本件処分は、以下の点を考慮すれば、被告消防長に与えられた裁量権の範囲をこえ、或いは、その濫用があったものとして取消されるべきであった。
1(信義則違反)
そもそも、原告が精神疾患に罹患し、勤務不能の状態に陥ったのは、一(請求原因)3項記載のとおり、被告消防長の意向を受けた本田署長らの徹底的ないやがらせ行為に起因するものであり、右行為が国家賠償法に該当し損害賠償請求しうるのは勿論、被告消防長が右行為によって原告が陥った状態を理由として本件処分に及ぶことも許されないものである。
2(他事考慮)
地方公務員法二八条は、公務の能率の維持及びその適正な運営の確保の目的から分限処分制度を定めているところ、一(請求原因)3(一)冒頭記載のとおり、被告消防長は、もともと当初から原告のような遠距離通勤者などを排除することを企図して本件処分をなしたものである。原告が精神疾患をわずらってからとった昭和五六年四月から五月に欠けての一連の行動(後記六(再抗弁に対する認否)4項参照)を非行事実として重視し、指定医二名の診断書が揃わない段階から既に分限免職する意思を有していたことは、これを裏付けるものである。
3(比例原則違反)
被告消防長は、原告が精神疾患に罹患してから約半年余の病気休暇を与えたのみで、分限休職措置をとらず、いきなり本件処分をなしたものであり、本件の場合も休職期間をもうけることにより快方に向う可能性があったのであるから、本件処分は比例原則に反するものである。
六 再抗弁に対する認否
1 再抗弁1の事実のうち、原告の精神疾患が原告主張のいやがらせ行為に起因することは否認し(一(請求原因)3項記載の主張に対する認否は、二(請求原因に対する認否)2項のとおり)、その余は争う。
2 同2の事実は、いずれも否認する。
3 同3の事実のうち、分限休職措置をとらなかったことは認めるが、休職措置をとればその間に原告が快方に向う可能性があったことは否認し(三(抗弁)1項参照)、その余は争う。
4 なお、分限休職が可能なのは、休職期間中にも一定の給与を支給する建前になっていることから解釈すると、休職者に真剣な療養態度が期待できる場合でなければならないものと考えられるところ、本件においては、原告に真剣に療養に専念する意思がなく、また、原告の両親に保護能力がなかったものである。そして、原告は、昭和五六年四月ないし五月ころ、自己の勤務先の署長名を出して見知らぬ人から金銭を寸借したり、夜間に他の消防署に赴いて宿泊方を申し込んだり、自家用自動車に手製の木のナンバープレートをつけて走行したりするなどしたため、組合に苦情や非難がよせられるような状態であったが、同年九月からも、自宅の田と他人の田との区別ができず、両親が目を離していると未だ熟していない他人の田まで稲刈りをするような危険な状態であり、数々の異常行動を繰返すことは必至と判断される情況であった。また、原告の両親と面接した際、任意退職することを勧めたところ、最終的に親族に異議はないが、原告が正常に戻ったとき非難されては困るので、一方的な分限免職の処分をとって欲しい旨の申入れを予め受けた。
以上のようなことを考慮すると、分限休職処分をとらずに本件処分をしたことに、裁量権の濫用や逸脱があったものとは到底いいえない。
(右事実に対する原告の認否) 昭和五六年四月ないし五月ころの原告の行動は認めるが、これは、原告の精神疾患によるものであり、本件処分にあたって考慮することは許されない。その余は否認する。
第三証拠関係
証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。
理由
第一国家賠償法にもとづく損害賠償請求部分について
一 請求原因1の事実、及び同3(一)(1)の事実のうち、原告が表記住居地から通勤しながら遅刻、欠勤をしなかったこと、平田司令らが消防吏員の職種の性格を理由に門真署の近隣への転居を原告に勧めたこと、同(2)の事実のうち、原告が昭和五五年一〇月一日付で警備係から庶務係に配転されたこと、同(3)の事実のうち、原告が誓約書の趣旨で「宣誓書」と題する文書を上司に提出したこと、同(5)の事実のうち、原告が退職願(但しその内容は否認する。)を提出したこと、同(6)の事実のうち、本田署長らが、昭和五六年四月から実施予定の職員配置表案から意図的に原告の氏名を削除して案を作成したこと、同3(二)の事実のうち、原告が昭和五六年四月一三日から病気欠勤し、同年五月二一日には神出病院の精神科に入院、同年九月七日には同病院を退院したが、その後も自宅から同病院に通院加療中であったこと、はいずれも当事者間に争いがなく、同3(一)(6)の事実のうち、原告が前記職員配置表案を見て狼狽したが本田署長らが声もかけず、庶務係職員石丸一彦と同道させて消防本部まで右案を原告に持参させたこと、同(7)の事実のうち、喜多消防長の指示で原告の氏名が職員配置表に記載されたことは被告において明らかに争わないのでこれを自白したものとみなす。
二 右争いがない事実に加え、(証拠略)並びに弁論の全趣旨によれば、請求原因3の事実に関し、次の事実を認めることができる。
1 組合は、被告守口市及び同門真市の消防に関する事務(消防団に関する事務を除く。)を共同で処理することを目的として設置された地方自治法上の特別地方公共団体たる一部事務組合であるが、主な施設としては、消防本部、守口消防署、門真署があり、その下部に各出張所を擁している。消防署の事務は、大別すると、鎮火及び救急活動を担当する警備係、火災原因と損害の調査を担当する調査係、消火施設や危険物施設などの監督指導を担当する予防係並びにその余の庶務を担当する庶務係の四係になる。
2 原告は、任命権者である被告消防長から、昭和四九年四月一日、組合の消防吏員に任命され、大阪府立消防学校に入校した後、同年一〇月から、門真署や島出張所などで勤務し、主として警備係に配属されていた。
ところで、原告は、法令などは勿論、管内の地理、消火栓の位置などの水利、対象物の構造など消火活動に不可欠なことについて十分に勉強せず、消火活動の現場においても、放水中の筒先を二人一組で持っていた際、恐怖心から筒先を離して逃げ出そうとしたり、放水を指示された箇所が既に放水し続ける必要性がなくなっているにもかかわらず、放水を続けるなど機転のきかないところがあり、また、救急活動にあたっても、活動報告書を十分に書けないなど勤務態度に芳しくない面が数多く見られた。
3 原告は、表記住居地から通勤していたが、任用の時点において、門真署管内又はその近隣へ住所を移す旨、担当者に約していたため、原告の上司らは、原告に対し、たびたび転居するように勧めた。
なお、原告が通勤に要する時間は、片道、電車で約三時間、中国自動車道を利用しても自動車で約一時間半かかり、通勤費が高くつくほか、緊急事態発生の際にはすぐに登庁できない状態であった。そして、原告の両親も、夕食時などに、原告から上司に転居を勧められている旨の話をきかされて、その方がよいとして原告に勧めたこともあった。
4 本田署長、西村庶務係長、岡田、高岡両警備司令は、予め昭和五五年一〇月一日の人事異動について相談した結果、原告は警備係、予防係、調査係には不適格と判断し、庶務係に配転することとし、本田署長は、同日付で庶務係長に異動する旨の内示を受けていた平田司令を呼び出し、同人に対し、原告をその直轄下におくからよく指導するようにと指示を与えた。
そして、それまでの庶務係の定員は三名であったが、今回は原告を加えて四名とし、原告の肩書きも、原告が庶務の仕事をやりながら、管内の地理、水利、対象物など警備関係の勉強をしやすいようにとの配慮から「庶務警備係」とすることに決った。
5 庶務係に配転された後も、原告は、退職者の退職金額を算出するにあたって初歩的な計算の誤まりをおかし、全職員の超過勤務時間の集計も誤まるなどしたので、一、二か月後にはかかる仕事からはずされ、消防本部への書類等の運搬、庁内の物品の移動、清掃などを担当するに至った。また、原告は、平田司令から、朝と昼の各三〇分間管内を巡回して町名、水利などを覚えるように指示されたにもかかわらず、すぐにやめてしまい、逆に、「一台の消防車に乗る五人のうち、一人ぐらい地理など知らなくてもよい。」と公言するなどした。
平田司令は、原告を叱責し、注意を与えることもあったが、親身になって指導を繰返したので、他の職員から、原告ばかり可愛がっていると陰口をたたかれたこともあった。
ところで、消防吏員になって六、七年もたてば、通常副消防士長に推せんされるが、原告の場合、そのままでは推せんも到底無理な状態であった。
6 原告は、庶務係に配転された後、仕事がそれまでの隔日勤務から日勤に変わって通勤が大変なこと、警備係の消火活動等が消防吏員の本来の仕事であるとの自覚をいだいていたことなどから庶務の仕事に不満を持ち、何度か本田署長や平田司令に対し、警備係に戻して欲しい旨申し入れたが、勉強の方が先であるとして断られた。
7 原告は、平田司令らからも、たびたび転居を求められ、また勉強もするように注意を受けたので、決意を新たにし、昭和五六年三月に入ってから、今度は心機一転して勉強すること及び近々管内に転居することを誓約した「宣誓書」と題する書面を自ら書き、平田司令に提出した。
8 昭和五六年三月二四日ごろ、突然、一身上の都合により辞めたい旨記載した退職願が原告から提出されたので、平田司令は原告にその真意をただしたところ、宣誓書で約束したことが実行できていないので退職願を出す旨答えたので、原告に対し、考え直すように伝えた。これに対し、原告は、笑顔になって頑張る旨答えたので、原告がその任用の当初から消防の仕事に熱意を持っている旨言明していたこと、原告には日頃からできそうもないことでも安易に請負ったり約束したりするような面がみうけられたことなどを考え合わせて、平田司令は、原告には本当に辞職する気持ちがないと判断した。
平田司令は、本田署長に対し、原告から宣誓書や退職願が提出されたことを伝えたが、正式な書類として受け付ける必要性はないものと判断し、右書類を自分で保管していた。従って、喜多消防長は、当時原告から右書類が提出されたことを全く知らなかった。
9 その後、本田署長、副署長、両警備司令、平田司令は、昭和五六年四月一日からの署内の職員配置について検討した際、平田司令の発案で、原告に対しこれまでの勤務態度に対し反省をうながし発奮させることを主な目的として、また、原告がその気もないのに軽々しく宣誓書や退職願までも次々と提出してくるのは体裁をつくろうにしても極めて不誠実な態度と判断し、多分に懲らしめる気持ちも手伝って、職員配置表案から原告の氏名を削除することとした。
そして、職員配置表案が作成された後、原告は、庶務係石丸一彦に同行して右案を消防本部に持参した。
10 原告は、右職員配置表案から自分の氏名が抜けていることに気付いて非常に狼狽し、その日のうちに門真市の議員で組合の議員も兼職している吉村議員に事情を打明けて力添えを頼んだところ、吉村議員は、喜多消防長を議員控室に呼んで原告から訴えられたことを話して事情説明を求めた。喜多消防長は、それまで全くこの件を聞知していなかったため至急調査することとし、本田署長と原告を呼び出し、本田署長から、「原告に管内近隣に転居するようにと指導してきたところ、原告から期限をきってその時までに転居しなければ辞める旨の宣誓書を書いてきたので、転居しなかった以上、本人が書いてきたところにそって職員配置表案から原告の氏名をはずしたが、自分としては辞めさすまでの気持ちはない。」旨の説明を受けた。喜多消防長は、原告の退職意思が確実でないかぎり、そのようないきさつがあっても職員の氏名を職員配置表案からはずすのはおかしいと判断して、本田署長に対し、右案を訂正するように指示を与え、右案は直ちに訂正された。
なお、喜多消防長から、職員の監督不行届を合わせて指摘され注意を受けた本田署長は、門真署に戻ってから、原告に対し、これまでの勤務ぶりなどについて注意を与えた。
11 原告は、その後、昭和五六年四月一三日から病気欠勤するようになり、同年五月二一日から神出病院の精神科に入院し、同年九月七日には退院したが、その後も自宅から同病院に通院して加療をうけ続ける状態であった。
被告消防長は、担当職員を介し、原告の主治医であった神出病院是成医師から「病名 精神分裂病 頭書疾患により昭和五六年五月二一日入院加療中であるが現在のところ病状固定しまだ長期継続入院の要あり。例え寛解しても消防の職務の任に耐えることは不可能と思はれる。」旨の昭和五六年九月三日付診断書、及び、大阪警察病院井上医師から「病名 性格障害・社会的未熟 脳波検査は正常であるが、性格的に未熟であり、新しい外界の刺激に対して有意義な適切な反応を示すことが困難な場合が多いと考えられる。」旨の昭和五六年一一月二日付診断書を徴し、原告は精神疾患により消防職務の遂行には支障があり、またこれに堪えないものと判断して、昭和五六年一一月二〇日付で本件処分をなした。
以上の事実が認められ、右認定に反する原告本人尋問の結果の各供述部分は、供述当時の原告の精神状態及び前掲各証拠に照らし、直ちに措信できない。また、右認定に反する(証拠略)の記載内容部分は、作成者の氏名、住所等が不明であり、当裁判所においてもその成立の経緯及び内容の真偽を判定できないものである以上、直ちに措信することはできない。
他に右認定を左右するに足りる証拠はない。
三 右認定事実を前提に、請求原因3項の国家賠償法一条一項に該当する違法行為があったか否かの事実について検討するに、同項(一)冒頭の、喜多消防長に遠距離通勤者らに徹底的ないやがらせをし退職に追いこむとの方針があったこと、本田署長らが喜多消防長の意向を受けていやがらせ行為をしたことは、これを認めるに足りず、同(1)のうち、上司らが原告に対し管内ないしその近隣への転居をたびたび勧めたことは認めるものの、原告が任用された際その旨を約していたこと、前記二3認定のとおり、消防吏員の職責や通勤費を考慮すると右勧告にもそれなりの合理的な理由が認められることなどからすると、右勧告に違法性があったものとまでは到底いえず、同(2)のうち、原告を庶務係へ配転した理由は、前記二24認定のとおり、当時警備係の職務がつとまらなかった原告に勉強する機会を与えるというものであったのであるから、配転権を濫用した違法があったものとは認められず、従って、同(3)のうち、本田署長らが原告の警備係に戻して欲しい旨の要請を断ったことも違法とはいえず、同(3)の宣誓書及び同(5)の退職願は、原告が自発的に書いて直属の上司である平田司令に提出してきたものであり、本田署長らが原告に対し書くことを強要したとまで認定できない以上この点に関し違法行為があったとはいえず、同(4)の点は、前記二5認定事実を前提にすると、仮に厳しく注意し叱責したとしても直ちに違法とまではいえず、同(7)の点は、これを認めるに足りない。
ところで、同(6)の点に関しては、前記二9認定のとおり認められるところ、一般的に退職の確実な者ないしは退職意思を明確にしている者以外の者の氏名を意図的に削除し、その者に見せる目的で職員配置表案を作成する行為は、無言の退職勧奨としての効果をもつものであり、また、配置表案という書面でなされる点において、相手方に与える精神的打撃は大きいものがある。本件においては、原告が宣誓書や退職願を提出したことは一応認められるものの、平田司令はその真意を原告に確めたところ、原告には本当に辞職するとの気持ちがないとの感触を得ており、本田署長らにも原告が本当に辞職するつもりはないことが判っていたものと推認できる。従って、原告の従前の勤務態度に問題があり、軽々しく退職願などを提出する行為に対しけじめをつけ、その反省をうながし発奮させる必要があり、本件行為が主として右のような動機からなされたことを考慮しても、なお、本件行為の違法性を否定することができないものといわざるを得ない。
なお、同(二)の点に関しては、原告が軽々しく退職願を提出した行為が既に原告の精神疾患との関連を推測する余地があり、また、後記第二、二、1ないし7認定事実に照らしても、右疾患が本田署長らのいやがらせ行為に起因するものとは到底認められず、前記二11認定のとおり、被告消防長は、是成医師及び井上医師の二名の医師の診断を徴し、本件処分をしたものであって、原告主張の他の観点からも右処分を違法ということは到底できない。
四 請求原因4の事実に関し、前記二10認定のとおり、原告は、職員配置表案から自分の氏名がはずされていることに気付いて非常に狼狽し、直ちに吉村議員に相談しに行っているのであって、その精神的苦痛はかなりあったものと推認されるが、直ちに右案が訂正され、右案はあくまで案にとどまったこと、右案を作成する動機となった原告のこれまでの勤務態度など一切の事情を考慮すると、原告の右精神的苦痛に対する慰謝料は五万円とするのが相当と思料する。
五 同5の事実に関しては、(証拠略)及び弁論の全趣旨によれば、被告守口市及び同門真市は、両市の消防事務を処理するために組合を設置し、組合規約八条によれば、組合の経費は両市の分賦金その他の収入をもってこれにあてることとされており、右分賦金は、毎会計年度の前年の一二月末日現在における住民基本台帳法及び外国人登録法にもとづく両市の人口、世帯のそれぞれの合計数を、人口割、世帯割の双方とも一〇〇分の五〇の割合で両市に分賦することとされており、組合の経費は両市が拠出していることが認められるのであるから、組合が独立した法人格を有し、形式的には組合運営の経費を組合が支弁しているものとみられるとしても、実質的な費用負担者として被告両市が国家賠償法三条一項により責任を負うものと解される。
六 よって、原告は、被告守口市及び同門真市に対し、国家賠償法一条一項、三条一項にもとづく損害賠償として連帯して五万円及びこれに対する不法行為の後である昭和五六年一一月二〇日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める権利を有する。
第二本件処分の取消請求部分について
一 請求原因1及び2の事実は、当事者間に争いがない。
二 抗弁1の事実のうち、被告消防長から原告に交付された処分説明書に被告主張の記載のあったこと、再抗弁3の事実のうち、本件において分限休職措置はとられていないこと、再抗弁に対する認否欄4の事実のうち、昭和五六年四月ないし五月ころの原告の行動は、いずれも当事者間に争いがなく、抗弁2の事実のうち、是成医師、井上医師が原告を診察したことは原告において明らかに争わないのでこれを自白したものとみなす。
右争いのない事実に加え、(証拠略)並びに弁論の全趣旨によれば、抗弁、再抗弁及び再抗弁に対する認否欄4記載の各事実に関し、次の事実を認めることができる。
1 原告は、昭和五六年四月一三日から同月二一日まで神戸アドベンチスト病院に入院したが、平田司令が同病院の高木医師に原告の病状照会をしたところ、神経的な面に問題があるとの指摘を受けた。
2 原告には、昭和五六年四月から五月にかけて、他の消防署に赴き、夜間の宿泊方を依頼したり、消防長に面会を要請したり、自宅まで消防車両で搬送を依頼したりしたほか、入院先の病院で花嫁募集中との張り紙をし看護婦に結婚を申し込み、電車の中で隣りあった女性にも結婚を申し込み、或いは、自家用自動車に手製の木のナンバープレートをつけて走行するなどの奇行がみられた。
3 原告は、昭和五六年五月二一日、「病名心因反応により向後三か月間の入院治療の要あり。」との田村浩一医師、是成医師の同日付診断書を得たうえ、神出病院に入院した。
4 平田司令及び組合の総務課職員係長藤原登(以下「藤原係長」という)は、昭和五六年六月一九日、原告の主治医是成医師と面談し、原告の症状と予後の説明を受けた。
5 原告の両親らは、昭和五六年六月三日、同月三〇日に続き同年九月一日門真署をおとずれ、「病名精神分裂病により向後約六か月の継続入院を要する。」との是成医師作成の同年八月二六日付診断書を持参したので、本田署長、平田司令らは、両親に対し、原告が治療に専念せず、消防吏員としてふさわしくない行状をとっていることを注意のうえ、依願退職か分限免職になるであろうと指摘し、できるだけ依願退職するように勧めたところ、両親は、親族会議を開いて後日連絡する旨答えた。
6 平田司令及び藤原係長は、昭和五六年九月三日、是成医師と面談した結果、「精神分裂病で、まだ長期入院の要あり。例え寛解しても消防の職務の任に耐えることは不可能と思はれる。」との同日付の前記第一、二11項記載の診断書を徴した。
7 原告は、昭和五六年九月七日、神出病院を退院した。
8 原告の父甲野精一は、昭和五六年九月九日、平田司令に対し、親族会議の結果、分限免職も仕方がないという結論が出た旨電話で回答した。
9 本田署長は、昭和五六年九月一二日付で喜多消防長に対し、原告の処分に関し、地方公務員法二八条一項二号の適用を上申し、これを受けて喜多消防長は、担当職員に対し、守口市門真市消防組合消防職員の分限に関する手続及び効果に関する条例二条二項にもとづき、是成医師の他に大至急一名の医師の診断を受けさせて結論を出すように指示した。
10 平田司令は、原告に加茂病院で診察を受けるように指示したところ、原告は、昭和五六年一〇月五日に受診し、「病名 心因性反応・抑うつ状態 当日一回だけの話合いでは精神分裂病性のものは判別できない。」旨の同日付の豊田医師の診断書を得て、これを郵送した。
11 その後平田司令の指示で原告は、昭和五六年一〇月一九日及び同月二三日の二度にわたり、大阪警察病院で診察を受けたところ、「病名 性格障害・社会的未熟 脳波検査は正常であるが、性格的に未熟であり、新しい外界の刺激に対して有意義な適切な反応を示すことが困難な場合が多いと考えられる。」旨の同年一一月二日付の井上医師の診断書(前記第一、二11項参照)を得た。
平田司令らは、井上医師に面談し、原告がその職務に耐えうるか否かを尋ねたが、その点は、組合側で判断すべきであると明確な回答を避けられた。
12 平田司令らは、昭和五六年一〇月二〇日ころ、原告の住居地をおとずれた際、原告の父から、親が目を離すと未だ熟していない他人所有の田まで稲刈りをしてしまう旨聞かされた。
13 被告消防長は、指定医井上医師の11項記載の診断書及び原告の主治医であり後に指定医に指定した是成医師の6項記載の診断書によれば、原告は、精神疾患に罹患し、消防職務の遂行に支障があり、またこれに耐えないものと判断し、更には、原告が病気療養に専念せずに他人に迷惑をかける行状を繰返し、今後もそのおそれが強いと危惧されること、原告の両親から分限免職もやむを得ない旨の意見を徴していることなどを考え合わせて、昭和五六年一一月二〇日付で原告に処分説明書を交付して本件処分をなした。
14 その後原告は、社町の農業委員会選挙に立候補して落選したり、播磨町長選挙、守口市や門真市の各市長選挙に立候補を表明するなどの行動をとり、入退院を繰返している状態にある。
以上の事実を認めることができ、前掲乙第六号証(口頭審理調書)及び証人甲野精一の証言中右認定に反する部分は措信できず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。
三 そこで、右事実を前提に、抗弁及び再抗弁事実について検討する。
地方公務員法二八条一項二号の分限免職事由としての「心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合」とは、同条二項一号の分限休職事由との対比上、将来回復の可能性のない、ないしは、分限休職期間中には回復の見込みの乏しい長期の療養を要する疾病のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合を指すものと解すべきであるが、分限休職処分を必ず前置すべきものとまでは解しえない。また、右規定にいう職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えないかどうか判断するにあたっては、将来の配転の可能性がありうる以上、当該職務の基本的な性格を考慮することが許されるものと解すべきである。本件においては、原告には、前記二2項及び12項認定の奇行がみられ、原告を診断した医師は、狭義の精神病に属する精神分裂病に該当するか心因反応ないしは精神病質に該当するかの違いはあるにしても、すべて原告に広い意味での精神疾患が存することを指摘し、そのうち、被告消防長が、前記二9項記載の条例により指定医として指定した是成医師及び井上医師はともに、右疾患が休職措置によってはまかなえないほどの長期の療養を要し回復の見込みの乏しい疾患であると診断しているものと考えられる。そして、消防の職務の基本的な性格が危険性の高い公安職であることを考慮すると、原告を庶務係にとどめておくことが相当でないとして被告消防長がなした本件処分は前記実体的な要件を満たし、かつ、前記条例上の手続的な要件も満たす適法な処分であったものというべきである。よって、抗弁事実はすべてこれを認めることができる。
ところで、地方公務員法二八条一項二号の要件に該当する場合でも、処分権者は必ずしも分限免職処分をする必要はなく、この点において、処分権者にはある程度の裁量権が認められているものと解されるところ、原告は、被告消防長が右裁量権を逸脱し、濫用したとして、再抗弁事実を主張する。しかしながら、再抗弁1の事実のうち、原告が精神疾患に罹患したのは、被告消防長の意向を受けた本田署長らの徹底的ないやがらせ行為に起因すること、同2の事実のうち、被告消防長は、もともと当初から原告のような遠距離通勤者などを排除することを企図のうえ本件処分をなしたことは、第一で判示したとおり、いずれもこれを認めることはできず、同3の事実は、前号の要件を満たすかぎり、分限休職措置を前置しなくとも違法とは解されないことは前記のとおりであるから、主張自体失当である。よって、再抗弁事実は、いずれもこれを認めるに足りないもの又は主張自体失当である。
四 以上によれば、原告の本件処分の取消しを請求する部分は、理由がないことに帰する。
第三結論
以上の次第であって、原告の本訴請求は、そのうち、原告が被告守口市及び同門真市に対し、国家賠償法一条一項、三条一項にもとづく損害賠償として連帯して五万円及びこれに対する昭和五六年一一月二〇日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるからこれを認容し、右被告両名に対するその余の請求、被告消防長に対する請求は、いずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条を適用し、仮執行宣言の申立てについてはその必要性があると認められないのでこれを却下して、主文のとおり判決することとする。
(裁判長裁判官 中田耕三 裁判官 北澤章功 裁判官 波床昌則)